アビスパの瓶にケチャップは入っているのでしょうか
先日もサウサンプトン所属の日本代表吉田麻也がインタビューにて、
ゴールは「
【麻也、ゴールは「ケチャップのようなもの」「いつか出る」 得点力不足も過度の心配なし】
この言葉は日本では本田圭佑が使ったことで、メディアでも取り上げられた経緯もありますが。
この表現はもともとは、本田圭佑が言ったわけではなく。
元々はは元オランダ代表でマンチェスター・Uやレアル・マドリードでプレーしたルート・ファン・ニステルローイが言った言葉。
レアル・マドリード時代にゴールが生まれず悩むアルゼンチン代表のイグアインにアドバイスとして発言したそうですが。
ゴールというのはなかなか出ないケチャップみたいなもので、そのうちドバっと出るよ。
と、技術論というよりは、気楽にやれよ。くらいの意味のようですが。
ただ、「なかなか出ないケチャップ」というのはチューブ式の容器が主流の日本ではピンとこない表現。
海外の瓶に入ったケチャップの出てこなさ加減を知らないと伝わりにくい表現ではあります。
例えばこういった状況。
瓶のケチャップがなかなか出ない。
出そうと思って、何度振ってもでない。
でもそのうち「ドバッ」と出てくる。
それが海外のケチャップの特徴のようです。
ちょっと馴染みがない表現なので、もう少し日本ナイズされた表現が欲しいところですが。
さて、ファジアーノ岡山を相手に試合終了間際にウェリントンのゴールで勝利した今節。
アビスパはシュートは打てども「得点」にはならず。
ファン・ニステルローイの言葉に例えて言うなら「瓶入りのケチャップ」を顔を真っ赤にしながら振っているといったことろでしょうか。
そのうち、ドバっとゴール量産となればよいのですが。
そもそも、そのケチャップの瓶は空じゃないですよね…。なんて心配をしてみたり。
アビスパ福岡にゴールラッシュは訪れる日が来るのだろうか…。
「ウノ・ゼロ」であろうが勝てることにこしたことはないものの、2-0、3-0と見ていて安心できる勝利をそろそろ見てみたいわけですが…。
そんな日がアビスパ福岡に訪れる日は来るのか…?
ということで、J2第13節アビスパ福岡 vs ファジアーノ岡山戦を振り返ってみたいと思います。
3バックの継続
GWの連戦明け。再び3連戦を迎えるアビスパ福岡。
湘南戦を「上位対決」として迎えるためにも今節のファジアーノ岡山戦は「勝点3」を取りたい試合。
冨安が代表戦で不在となるため、どういった布陣で臨むのか注目だったわけですが。
3バックに変更はなし。
井原監督が3バックを採用しているのは、「この形が良い」と判断しているのか。
それとも相手の布陣(GW連戦中からずっと相手も3バック)を見て判断しているのか、見極めたいと思っているんですがこの日も井原監督の狙いは不明のまま。
単純に「ワントップ、ツーシャドーに3バックで対応」という戦術はあまり取らない監督だとは思っているのですが。
4-4-2で相手が来た時にスルッと4バックに戻したりするのでしょうか。
石津が再びスタメン落ち
前回の松本山雅FC戦ではターンオーバーかなと思っていた石津ですが、2戦連続の先発落ち。
次節の湘南戦へ向けた温存策という解釈をするにはちょっと長いお休みかもしれません。
私が思っていた以上に井原監督は前節松本山雅FC戦のジウシーニョと坂田のプレーを評価していたのでしょうか。
確かに松本山雅FC戦は攻撃のテンポが良かったという印象はあります。
とはいえ、最終ラインからのボールの引き出しや、前を向いた時の展開力など坂田やジウシーニョにはない魅力のある石津の先発落ちは無いと思っていたんですが…。
ゴールやラストパスといったフィニッシュに絡むプレーで結果を出せない点はシビアに見ていたのかもしれません。
相手を押し込めた前半戦
出場選手の違いはあれど、チーム戦術は「東京ヴェルディ戦」から同じような形を展開しているアビスパ福岡。
【東京ヴェルディ戦の記事はこちらから】
このファジアーノ岡山戦も前線の3人でのプレスが有効だったように思います。
おそらくですが、ファジアーノ岡山の理想的な展開としては「攻撃に4人」人数をかけられること。
2枚のボランチのうち、一人が下がって最終ラインからボールを引き出す。
もう一人は、上がって相手のボランチの間や、その裏などのスペースへ侵入してパスを受ける。
ウィングバックはチャンスと見れば、サイドを駆け上がる。
というのがビルドアップにおけるファジアーノ岡山の狙いだったように思います。
しかし、アビスパが前からプレスを仕掛けてくるため、最終ラインからのパスが危うい状況に。
その結果、ウィングバックとボランチがパスを受けるために下がってフォローするしかない状況がこの試合の多くの時間を占めたように思います。
こうなってしまうと、前線との距離ができてしまう。
そうすると、ボールを前に運ぶのに手数がかかってしまいます。
手数がかかれば、相手の守備にかかりやすい。
アビスパ福岡がファジアーノ岡山にシュートチャンスをなかなか与えなかったのは、「攻撃に手数がかかる」状況に岡山を押し込めたことが要因だった見ています。
シンプルに縦にロングボールを入れられていたら
アビスパ福岡としてはシンプルに縦にロングボールを入れられていたほうが嫌な展開になっていたかもしれません。
試合開始直後のプレーですが、ファジアーノ岡山のクリアしたボールがアビスパの最終ラインへ飛んだシーン。
堤がボールの処理にもたつくところを豊川が奪って左サイドで基点を作られるシーンがありました。
堤としては、ボールを確実にマイボールにするためにヘディングではなく、一度ボールをワンバウンドさせて足元で処理したかったのでしょうが。
ワンバウンドさせた結果、ボールが高くバウンド。豊川にボールに追いつく時間を与えてしまいました。
安全に行ったつもりだったとは思うのですが・・。
結果的に軽率な対応になってしまいました。
もし冨安だったらどう対応していたか判りませんが…。この数試合冨安の守備は非常に安定していただけに。
冨安不在の影響を感じてしまうワンシーンでもありました。
前半押しこまれてしまったファジアーノ岡山は、後半になって縦に長いパスを入れる回数が増えたようにもみえました。
押し込まれていた前半を受けての対応策だったと思うのでうが、最初からこの形を狙われていたら…。
もしかしたら、まったく違う試合展開になっていたかもしれません。
ウェリントン以外の選択肢
アビスパの攻撃がウェリントンに依存しているのは誰が見ても明らかです。
ファジアーノ岡山戦でも攻撃の軸はウェリントン。
ロングボールを蹴れば、落下点にはウェリントン。
セットプレーのターゲットもウェリントン。
クロスのターゲットもウェリントン。
対戦相手からは確実に警戒されているわけですが、そんな相手の警戒を圧倒的フィジカルでねじ伏せているウェリントン。
アビスパ福岡がなかなか点が取れないのはわざわざ「相手に警戒されている方法」に頼って戦っているからなのでしょうか。
まあ、それを打ち破っても点が取れているというのは非常に心強いといえますが。
しかし、この日は「ウェリントン以外」という選択肢を狙う形もあったのかなと。
まず、セットプレーで目立ったのは「岩下をターゲット」にしたパターン。
直接ウェリントンではなく、ファーサイドで張った岩下に一度合わせて折り返すパターンが多かったようですが。
とはいえ、以前はセットプレーでウェリントンじゃなく冨安を狙うケースもありました。
最近はあまり見なくなっていましたが、止めちゃったのでしょうか。
また、「東京ヴェルディ方式」の戦術になってからウェリントンがビルドアップの基点になる事もあり。
ウェリントンが基点になってからのプレーがスピーディーだと、ウェリントンがクロスのタイミングでゴール前に不在ということも時々あるのが最近のアビスパ福岡。
この試合でもそういった場面がありました。
前半5分頃のプレーですが、ジウシーニョがサイドを抜けたシーン。
ウェリントンが堤のサイドチェンジを胸でトラップも、相手に奪われたところを再び岩下がスライディングでボールを奪ったところから。
ジウシーニョがサイドでボールを受けて、クロスまで行くのですが。
プレーの最初にピッチ中央付近で基点として絡んでいたウェリントンは不在。
それを見て坂田がファーサイドからニアサイドまでランニング。
さらに駒野が右サイドから中央へランニング。
三門も走りこんでいました。
守備の人数がそろっていたこともあり、スペースは空きませんでしたが、ゴール前に人数かけようとする意識はあったように思います。
坂田もスペースを空ける動きをしていましたし、駒野、三門はそのスペースを狙って走っていました。
岩下、實藤の後ろからのロングシュートも惜しいシーンがありましたが、こうした泥臭いところでのランニングや工夫があった点は良かったと思っています。
亀川が中央に走りこむというシーンはほとんどみませんでしたが、駒野にはそうした指示が井原監督から出ていたのか、それとも駒野自身の判断だったのか。
ただ、希望的観測かもしれませんがこの「駒野のオーバーラップ」が最後の決勝点につながったとんじゃないかなと…。
後半のおなじみ?前線2枚替えの効果
試合開始直後からプレスをかけ続け、オーバーラップした選手の後ろのスペースを埋めるために素早く帰陣。
頻繁なポジションチェンジにチャンスとなれば一気にゴール前に走りこむ。
ピンチとなれば、自陣深い位置にも顔を出す。
などなど、非常に運動量の多いアビスパ福岡のFW。
それだけに重要な役割でもあります。
ウェリントンも非常に重要ですが、そのサイドを固める選手も非常に重要と言えます。
ここの運動量が落ちると、攻撃だけでなく守備にも影響が出てきます。
そのため、後半60分前後のFWの2枚替えというのは戦略上必須の交代なのだと思われます。
この試合では石津とポッピが坂田とジウシーニョに代わって出てきました。
結果的にポッピのクロスからウェリントンの決勝弾が生まれたわけですが。
ロアッソ熊本戦でも途中出場のポッピのクロスからウェリントンの決勝弾が生まれていますが、ポッピは途中出場の方が活きるのか…?
そんなポッピのクロスの直前のプレー。
残り時間が僅かな状況でアビスパの攻撃もかなり前のめりな状況。
この段階では岡山の守備ラインは一直線でアビスパの攻撃陣に対面している状況。
駒野がボールを持って攻め上がろうとした時、石津がDFとボランチの間でフリーでポジショニング。
大きく手を広げて存在をアピールしていました。その石津を見つけた駒野からパスが石津へ入ります。
駒野は石津にボールを預けたあと、ゴール前まで走りこみます。
この時、ファジアーノの守備陣が駒野に注意が向きます。駒野の侵入に合わせてラインを下げます。
ボールを受けた石津はボールキープしてためを作って、サイドのポッピへパス。
ウェリントンは石津がボールを持ってタメを作ったのをみて、ボールを受けようとしてポジションを下げました。
ここで駒野の侵入を警戒して、ラインを下げるファジアーノの守備ラインとボールを受けようとして下がったウェリントンとの距離にギャップができました。
そのまま、岡山のDFラインは下がりながらの守備になるのですが、ポッピのクロスが入った時、石津もこの空いたスペースへ飛び込んでいました。
岡山のDFの一人は明らかに石津と競り合いに。
ウェリントンに近かったDFはウェリントンの前側に飛び出すのですが、これがウェリントンの前でクリアしようとしたのか、石津の動きに反応して飛び込んだのか意図は読み取れませんが…。
ファジアーノ岡山のDFの上を超えたボールをウェリントンが沈めてアビスパ福岡の決勝点となりました。
細かなことの積み重ねなのですが。
試合開始5分のとき、駒野はゴール前に走りこんでいました。そして、試合終了間際。
試合終盤体力的にもキツイとは思いますが、前半と同じように駒野がゴール前に走りこんでいました。
決定的なプレーではないのですが、ゴール前に走りこんだことで岡山の守備は駒野に気を取られていましたし、その結果ウェリントンとのギャップを作り、石津が走りこむスペースを空けてしまいました。
偶然といってしまえば、そうなのかもしれませんが。
しかし、個人的には最後までゴール前への意識を失わず走り続けた駒野のプレーを讃えたいと思います。
淡々と自分の役割をこなし続けるベテランのプレーが呼び込んだ決勝点だった。と思いたいです。
アビスパに蓄積するケチャップ?
こうしたプレーがもっと目に見えて出てくると、アビスパのゴールはもっともっと増えるのでは?と、思っています。
もちろん、ミドルシュートを打つことも必要だとは思います。
しかし、現状のアビスパ福岡には「相手を意図的に崩してのゴール」というプレーがなかなか見られません。
そうした狙いが見えないことはないのですが、まだまだ工夫の余地があるのではという印象です。
散々シュートを打って「たった1得点」の試合ではありましたが、精度だけの問題でもないのかなと。
結果論ではあるものの紐解いてみれば「細かなことの積み重ね」が最後に呼び込んだゴールだったと個人的には思いたいです。
ウェリントンも相手に体を寄せられるよりは、フリーでプレーできたほうが精度は高いわけで。
相手の逆を突く。
というのは、どんなスポーツでも相手を倒す上で必要なことだと思います。
そして、そうした積み重ねこそが「ケチャップ」として瓶の中に蓄積していると思いたい。
そして、最後はドバっと。ゴールラッシュとして出てくるのではないかなと。
まだまだアビスパ福岡にはこうした「相手の逆を突く」細かいプレーの成熟度が足らないのだと思います。
J2とはいえ、直線的な攻めでは弾き返されてしまいます。
前回の松本戦でもウェリントンを囮にしてゴールを狙うプレーがあっても良いんじゃないかと感じたのですが、もっと相手の「裏」をかくような動きがないと「ケチャップ」は瓶の中に溜まっていかないよなと。
この課題は井原監督はじめアビスパの選手が一番感じていると思うのですが…。
次節湘南ベルマーレ戦は上位決戦。
さすがにゴールラッシュは難しい相手かもしれませんが、「値千金のゴール」という形で凝縮された「良い形」でのゴールを期待したいです。
ウェリントンにもゴールして欲しいのはもちろんですが、他の選手にも得点をマークして欲しいところです。
J2の戦いはまだまだ先が長いですが、首位に立つなら早いほうが良いと思っています。
首位に立ったからといって、その後の試合が楽になるわけじゃないですが。
むしろ追われる経験がほとんどなかったチーム。場合によっては、アビスパ福岡のバランスを崩しかねない経験かもしれませんが。
「てっぺん」から見える世界を経験しておくことはアビスパ福岡にとっては間違いなくこの先のシーズンを切り抜ける上で糧になると思っています。
前回のJ1昇格時は一度も経験できなかったことですし。
そういったこと含め、チャンスがあるなら早めに経験しておきましょう。
もちろん、湘南に勝利したとしても横浜FCの結果次第で、首位になれるとは限りませんが。
ただ、意気込みだけは「勝てば首位奪取」ということで。
次節、湘南ベルマーレ戦、今季ベストゲームを期待したいですね。